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男はパソコンのディスプレイから放たれる青白い光に晒されていた。暗い部屋、灰皿でくすぶる煙草の臭い。黒いベールの中にポツンと浮かぶ光からそれ以外の情報を読み取ることは難しい。
「いやぁ忙しい忙しい。僕がどんなに忙しいかというと盆と暮れと正月が一度に来たような忙しさなんてものじゃないんだ」
男はディスプレイを目の前にキーボードを叩きながらドーナツを食べコーヒーを飲み煙草に火をつけ耳かきをする。ケータイのメールを打ちながら伊右衛門濃いめのペットボトルからお茶を飲みコエンザイムQ10Lカルニチン入りキャンディをなめる。右に置いたISO14000の資料に目を通しその進捗具合を記した20枚のA4用紙を右手でめくる。左においたAERAのページをめくりながらドーナツを食べコーヒーを飲む。そして何本目かわからないhi-liteのメンソールにまた火をつけた。
「この暗い部屋でも僕が忙しいってのはわかるはずだろ。もう大変だよ。i-tunesをバージョンアップしなきゃならないし、読みかけの小説もたくさんあるんだ」
男は一本やりな調子の高い声で話す。目つきや顔つきはいまいちはっきりと見えない。
「そうそう、これを今日はアップしないとな。ブログだよ、ブログ。僕のブログ知ってるの?この業界じゃちと名の売れたブロガーなんだから。例えるならHAROLD MELVIN&THE BLUE NOTESってとこかな。70年代のR&Bソウルの旗手というべきグループだ。いまのゆとり世代にとっては馴染みがないのも当たり前だよね。ウタダをR&Bと勘違いしたケツの青いガキばっかだもん。60年代のモータウンズから派生してきた流れが70年代のフィラデルフィアサウンドに繋がり、それがブルースに結びついたんだよ。その集大成と言うには大げさだけど当時の雰囲気を代表してくれるバンドのひとつだ。つまり、ある種の人達にとってはメジャーでありその他の人達にとってはマイノリティなバンドにすぎないんだけど、僕自身もそうありたいと思うんだ」
「え?言っていることがよくわからない?つまり、偽物じゃないってことさ」
男はせわしない口調で喋っている。キーボードの上を滑る指は止まることなく更にスピードを増す。
「えぇっと、『あんかけスパ』で『トッポ』に行ってきた、と。そうだよ、僕は色々なお店で食べ歩いてそれをこうやって記事にしてるのさ。たまにコメントももらえたりするんだぜ。『面白い記事ですね』『美味しそうですね。私も食べてみたいです。』とかね。 楽しいのかって?そりゃ、こうやって記事書いて色々な人に見てもらうのは楽しいさ。みんなが僕のことを誉めてくれるし、仲間内でも凄いって言われるし、あ、ネットで同じ食べ歩き仲間と情報交換したり実際に会ってお店やネットの話で盛り上がったりするんだ。そういう仲間ね。お店の人にも一目置かれたりするしね。『いつもお世話になってます。あの記事さすがですねぇ』なんて言ってサービスしてくれたりもするんだぜ。君に言ってもわからないかもしれないけど。例えるなら、そうだな」
男はキーボードを叩く手を休めてペットボトルのお茶に手を伸ばし一口飲んだ後に残りのドーナツを食べ終え灰皿の上で燻る煙草を美味そうに吸った。
「例えるなら、僕は広告塔であり味のキーマンであり食の伝達者でもあるな。つまりヨゼフ・ゲッペルスだ。ナチスドイツにおいて様々なプロデュースでドイツ人民の心を操った男だ。そういうフレーズってなんか格好良くない?麺キチさんみたいな影響力はまだないけど、そういう扇動者的な存在になるのって良くないかい。え?麺キチさん知らないの。へぇ今時珍しい。まだあまり良くわかっていない顔だなあ。僕のブログは一日に一万ヒットもあるんだぜ。まぁいいけど」
男は煙草を灰皿に押しつぶしてペットボトルのお茶を飲み再びキーボードに指を戻した。
「こうやってさ、写真も載せるんだ。いまは写真がないとどうしても訴求力が弱いからね。文字にしても読み手のイメージが貧困だからどんなに頑張って表現してもみんな読んでくれないんだよ。だからこうやって色んな写真を載せればみんなが凄い凄いって言ってくれるんだ。これもある種ゆとり教育の弊害だよね。例えるなら『我々は映像を手に入れ、想像を失った』って誰か有名なアメリカ人のセリフだったと思うけど、いい得て妙だよね。あれ?使い方あってるかな。とにかく、写真は重要なんだ。みんなが誉めてくれるしね」

「メニュー表だって載せちゃうんだぜ。これは他のブログではなかなかやってないから僕がやることにしたんだ。え?お店の人に許可もらってんのかって。 そんなの貰ってもしょうがないじゃない。勝手に撮って勝手に記事にしてんだよ。お店の宣伝にもなるし悪いこたない。ん、モラルね、そう言うと思ったよ。確かにモラルには反しているけど、お店の人が苦情言ってきたら消せばいいだけの話しさ。たまに気がむいた時にはちゃんと聞いているよ。写真撮るけどいいかって。怖そうな人には聞かないけどね。なんせこっちは金を払っているお客様だ!それについての感想を書いて何が悪いんだよ。みんなやってんじゃないかよ。なんだよ、悪いことを書かれたらそれを改善してくれればいいだけの話しじゃないか。僕のブログを楽しみにしている人はたくさんいるんだぜ。千人を余裕で超えるんだ。一万ヒットだからもっといるかもな。まぁいいけど」
男は少しばかり汗をかいている。普段から気にかけていることを突っ込まれ慌てた声で一気に喋り終えた。男はペットボトルのお茶を飲み右手においた資料に目を落とした後に再び顔をディスプレイへと向けた。
「『店内は小奇麗で細長い間取り。店員の応対はマニュアル的ではなく、馴染みの喫茶店のようなそんな心地よさ』 『私は¥750ミラカンを注文した』 こうやってさ、細かく書いて読んでくれる人にどんなお店かという情報を伝えるんだ。そうすると読んでくれた人がお店選びに役立つかもしれないだろ。僕がやっていることには意味がちゃんとあるんだ。例えるなら『文学的な雪かき』さ。誰かがそれをやらなくちゃいけないってことだよ。面倒くさい作業だけど僕は嫌いじゃないからね。あ、この表現は村上春樹の小説からのパクリだよ。君は読んだことないなら一度読んでみるといい。ダンス・ダンス・ダンスや羊を巡る冒険なんてのがいいかもしれないね」

男は神妙な顔つきで虚空を睨み、一つ頷いた後で何事かをつぶやき始めた。アラブで用いられている言語にも聞こえるし、セルビア語にも聞こえる。それはとても不思議な抑揚を持った言葉だった。
「あんかけというものは、酸味やスパイシーな辛味が大事なんだ、そしてソースのコクが深みを持たせこれを食べている人に感じてもらわなきゃならない。うーん、なんか君が側にいると落ち着かないな。良いフレーズが思い浮かばないんだな。例えるなら君は、木槌の無い餅つきだよ。餅つけない、もちつけない、落ち着けない。なんだか僕の記事みたいだ。オチ付けない」
甲高い声で男が笑っている。その声は暗闇のベールとその中心に漂う青白い発光色の霧の中で無機質に響き渡った。考えてみれば音のない部屋だ。彼の言葉とキーボードを叩く音、そして彼の所作による雑音のみで周りからは何も聞こえてこない。時折、一瞬だけ無音になることがあるが、その時の空気の静寂は深海の中で鼓膜だけが圧力を感じているような圧迫感がある。とても奇妙な部屋だ。
『あんかけの酸味やコクやスパイシーな辛味は突出するものでもなく、バランス良く控えめに保たれている。安心できる味と言うべきか、おとなしい感じだ。』
『しかし、特筆すべきはこの麺だろう。歯を入れた瞬間に押し返すような弾力、咀嚼しているという感覚がダイレクトに顎に伝わる。と言うのは少しばかり大げさすぎたかな。それでも、他の店に比べれば存在感のある麺だ。つるりとした感じではない舌触りも新鮮で、私はこの麺にこそ、この店の魅力があると思った。』

『続きましてー、¥750のアサリナだ。これは別の日に食べたものだがいっしょにアップさせてもらう。』
『アサリの甘みと風味が良い具合でスパイシーな餡と絡む。ホウレン草がフォーク休めにもなり、全体の調和を殺すことなくむしろ具がスパを引き立てていた。これはお勧めの一品である。私はこの店をあんかけ麺革命のお店と記したい。』
ひと段落ついた男は再びhi-liteのメンソールを取り出し、安っぽい緑色のライターで火をつけた。伊右衛門濃いめのペットボトルをくいと持ち上げ喉を潤し、コエンザイムQ10L-カルニチン入りキャンディをなめる。何度も何度もディスプレイ上の文字列を見直し、そして小さく頷きながら表示されたカーソルを[保存]ボタンに重ねMicrosoft社製のレーザーマウスを左クリックした。
静寂は続いている。この部屋に存在するのは煙草の紫煙とその臭いと鼓膜を圧迫するような静寂だけだ。暗闇の中でディスプレイの青白い光に晒された男の顔立ちはよくつかみとれない。目鼻立ちも口元も捉えようなく光に透けてしまっている。顔の無い男だ。
ねぇ、君は誰のためにその生産性の無い記事を書いているの?
君の人生の大半はそのブログと仕事に費やされるものなの?
サーバーがクラッシュして君の素晴らしいブログのデータが全て消え去ったときに失った時間を考えると死にたくならないの?
表情の無い男は答える。
「あぁ、なるほどね。君の質問を例えるならば、たぶんこれはとてもとても昔にあったファミコンブームに似ているのかもしれないね。
あの頃の僕らは熱かった。ファミコンを持っていればどんな奴でもクラスで人気者になれた。みんなが僕の家に遊びに行ってもいいかって聞いてくるんだぜ。ディグダグ、バンゲリングベイ、スターソルジャー、高橋名人、毛利名人、ファミコンロッキー、ウルテク、裏ワザ。こうやって口にするだけでもなんだか興奮してこない?」
「このブログはさ、僕にとってのファミコンなんだ。これを続けている限りみんなが僕のもとへやってくる。ほんとはめったに人の来ない部屋なんだけど、PCの中じゃ見ず知らずの人たちが大勢やってきて僕の記事を読み、僕の存在を認めてくれるんだ。素敵だろう?」
男の顔に疲れた笑みが浮かんだ。
静寂の部屋に遠くからサイレンの音がやってきた。
男は先ほどから喋っている相手が自分の内なる声だということに未だ気がついていない。
「そう、例えるならこのブログという存在は僕にとっての履歴書みたいなもんさ。この記録がある種マイノリティな人達に向けて発信され僕の存在が認識される。意味なんてなくたっていいんだ。それを認めてくれる人たちがここに集い、そして僕の癒しになるんだから。わかるかな?わっかんねーだろうなぁ。あ、これも昔々に流行ったフレーズなんだ。いやぁ何だか懐かしいや」
「うふふ。今日は八千ヒットか。」
男はひとしきり何事かを自分に語り終えた後で静かに眠った。暗闇の中に朝の光が染み入ってくる。男から見て左の方向から闇が割れ、そしてその波は徐々に暗い部屋を明るく侵食してゆく。部屋の全貌が明らかになってゆき、男の内なる闇も姿を消した。我々はもう少しこの部屋に留まり、闇の訪れとともに暫く男を観察してみるつもりだ。
「いやぁ忙しい忙しい。僕がどんなに忙しいかというと盆と暮れと正月が一度に来たような忙しさなんてものじゃないんだ」
男はディスプレイを目の前にキーボードを叩きながらドーナツを食べコーヒーを飲み煙草に火をつけ耳かきをする。ケータイのメールを打ちながら伊右衛門濃いめのペットボトルからお茶を飲みコエンザイムQ10Lカルニチン入りキャンディをなめる。右に置いたISO14000の資料に目を通しその進捗具合を記した20枚のA4用紙を右手でめくる。左においたAERAのページをめくりながらドーナツを食べコーヒーを飲む。そして何本目かわからないhi-liteのメンソールにまた火をつけた。
「この暗い部屋でも僕が忙しいってのはわかるはずだろ。もう大変だよ。i-tunesをバージョンアップしなきゃならないし、読みかけの小説もたくさんあるんだ」
男は一本やりな調子の高い声で話す。目つきや顔つきはいまいちはっきりと見えない。
「そうそう、これを今日はアップしないとな。ブログだよ、ブログ。僕のブログ知ってるの?この業界じゃちと名の売れたブロガーなんだから。例えるならHAROLD MELVIN&THE BLUE NOTESってとこかな。70年代のR&Bソウルの旗手というべきグループだ。いまのゆとり世代にとっては馴染みがないのも当たり前だよね。ウタダをR&Bと勘違いしたケツの青いガキばっかだもん。60年代のモータウンズから派生してきた流れが70年代のフィラデルフィアサウンドに繋がり、それがブルースに結びついたんだよ。その集大成と言うには大げさだけど当時の雰囲気を代表してくれるバンドのひとつだ。つまり、ある種の人達にとってはメジャーでありその他の人達にとってはマイノリティなバンドにすぎないんだけど、僕自身もそうありたいと思うんだ」
「え?言っていることがよくわからない?つまり、偽物じゃないってことさ」
男はせわしない口調で喋っている。キーボードの上を滑る指は止まることなく更にスピードを増す。
「えぇっと、『あんかけスパ』で『トッポ』に行ってきた、と。そうだよ、僕は色々なお店で食べ歩いてそれをこうやって記事にしてるのさ。たまにコメントももらえたりするんだぜ。『面白い記事ですね』『美味しそうですね。私も食べてみたいです。』とかね。 楽しいのかって?そりゃ、こうやって記事書いて色々な人に見てもらうのは楽しいさ。みんなが僕のことを誉めてくれるし、仲間内でも凄いって言われるし、あ、ネットで同じ食べ歩き仲間と情報交換したり実際に会ってお店やネットの話で盛り上がったりするんだ。そういう仲間ね。お店の人にも一目置かれたりするしね。『いつもお世話になってます。あの記事さすがですねぇ』なんて言ってサービスしてくれたりもするんだぜ。君に言ってもわからないかもしれないけど。例えるなら、そうだな」
男はキーボードを叩く手を休めてペットボトルのお茶に手を伸ばし一口飲んだ後に残りのドーナツを食べ終え灰皿の上で燻る煙草を美味そうに吸った。
「例えるなら、僕は広告塔であり味のキーマンであり食の伝達者でもあるな。つまりヨゼフ・ゲッペルスだ。ナチスドイツにおいて様々なプロデュースでドイツ人民の心を操った男だ。そういうフレーズってなんか格好良くない?麺キチさんみたいな影響力はまだないけど、そういう扇動者的な存在になるのって良くないかい。え?麺キチさん知らないの。へぇ今時珍しい。まだあまり良くわかっていない顔だなあ。僕のブログは一日に一万ヒットもあるんだぜ。まぁいいけど」
男は煙草を灰皿に押しつぶしてペットボトルのお茶を飲み再びキーボードに指を戻した。
「こうやってさ、写真も載せるんだ。いまは写真がないとどうしても訴求力が弱いからね。文字にしても読み手のイメージが貧困だからどんなに頑張って表現してもみんな読んでくれないんだよ。だからこうやって色んな写真を載せればみんなが凄い凄いって言ってくれるんだ。これもある種ゆとり教育の弊害だよね。例えるなら『我々は映像を手に入れ、想像を失った』って誰か有名なアメリカ人のセリフだったと思うけど、いい得て妙だよね。あれ?使い方あってるかな。とにかく、写真は重要なんだ。みんなが誉めてくれるしね」

「メニュー表だって載せちゃうんだぜ。これは他のブログではなかなかやってないから僕がやることにしたんだ。え?お店の人に許可もらってんのかって。 そんなの貰ってもしょうがないじゃない。勝手に撮って勝手に記事にしてんだよ。お店の宣伝にもなるし悪いこたない。ん、モラルね、そう言うと思ったよ。確かにモラルには反しているけど、お店の人が苦情言ってきたら消せばいいだけの話しさ。たまに気がむいた時にはちゃんと聞いているよ。写真撮るけどいいかって。怖そうな人には聞かないけどね。なんせこっちは金を払っているお客様だ!それについての感想を書いて何が悪いんだよ。みんなやってんじゃないかよ。なんだよ、悪いことを書かれたらそれを改善してくれればいいだけの話しじゃないか。僕のブログを楽しみにしている人はたくさんいるんだぜ。千人を余裕で超えるんだ。一万ヒットだからもっといるかもな。まぁいいけど」
男は少しばかり汗をかいている。普段から気にかけていることを突っ込まれ慌てた声で一気に喋り終えた。男はペットボトルのお茶を飲み右手においた資料に目を落とした後に再び顔をディスプレイへと向けた。
「『店内は小奇麗で細長い間取り。店員の応対はマニュアル的ではなく、馴染みの喫茶店のようなそんな心地よさ』 『私は¥750ミラカンを注文した』 こうやってさ、細かく書いて読んでくれる人にどんなお店かという情報を伝えるんだ。そうすると読んでくれた人がお店選びに役立つかもしれないだろ。僕がやっていることには意味がちゃんとあるんだ。例えるなら『文学的な雪かき』さ。誰かがそれをやらなくちゃいけないってことだよ。面倒くさい作業だけど僕は嫌いじゃないからね。あ、この表現は村上春樹の小説からのパクリだよ。君は読んだことないなら一度読んでみるといい。ダンス・ダンス・ダンスや羊を巡る冒険なんてのがいいかもしれないね」

男は神妙な顔つきで虚空を睨み、一つ頷いた後で何事かをつぶやき始めた。アラブで用いられている言語にも聞こえるし、セルビア語にも聞こえる。それはとても不思議な抑揚を持った言葉だった。
「あんかけというものは、酸味やスパイシーな辛味が大事なんだ、そしてソースのコクが深みを持たせこれを食べている人に感じてもらわなきゃならない。うーん、なんか君が側にいると落ち着かないな。良いフレーズが思い浮かばないんだな。例えるなら君は、木槌の無い餅つきだよ。餅つけない、もちつけない、落ち着けない。なんだか僕の記事みたいだ。オチ付けない」
甲高い声で男が笑っている。その声は暗闇のベールとその中心に漂う青白い発光色の霧の中で無機質に響き渡った。考えてみれば音のない部屋だ。彼の言葉とキーボードを叩く音、そして彼の所作による雑音のみで周りからは何も聞こえてこない。時折、一瞬だけ無音になることがあるが、その時の空気の静寂は深海の中で鼓膜だけが圧力を感じているような圧迫感がある。とても奇妙な部屋だ。
『あんかけの酸味やコクやスパイシーな辛味は突出するものでもなく、バランス良く控えめに保たれている。安心できる味と言うべきか、おとなしい感じだ。』
『しかし、特筆すべきはこの麺だろう。歯を入れた瞬間に押し返すような弾力、咀嚼しているという感覚がダイレクトに顎に伝わる。と言うのは少しばかり大げさすぎたかな。それでも、他の店に比べれば存在感のある麺だ。つるりとした感じではない舌触りも新鮮で、私はこの麺にこそ、この店の魅力があると思った。』

『続きましてー、¥750のアサリナだ。これは別の日に食べたものだがいっしょにアップさせてもらう。』
『アサリの甘みと風味が良い具合でスパイシーな餡と絡む。ホウレン草がフォーク休めにもなり、全体の調和を殺すことなくむしろ具がスパを引き立てていた。これはお勧めの一品である。私はこの店をあんかけ麺革命のお店と記したい。』
ひと段落ついた男は再びhi-liteのメンソールを取り出し、安っぽい緑色のライターで火をつけた。伊右衛門濃いめのペットボトルをくいと持ち上げ喉を潤し、コエンザイムQ10L-カルニチン入りキャンディをなめる。何度も何度もディスプレイ上の文字列を見直し、そして小さく頷きながら表示されたカーソルを[保存]ボタンに重ねMicrosoft社製のレーザーマウスを左クリックした。
静寂は続いている。この部屋に存在するのは煙草の紫煙とその臭いと鼓膜を圧迫するような静寂だけだ。暗闇の中でディスプレイの青白い光に晒された男の顔立ちはよくつかみとれない。目鼻立ちも口元も捉えようなく光に透けてしまっている。顔の無い男だ。
ねぇ、君は誰のためにその生産性の無い記事を書いているの?
君の人生の大半はそのブログと仕事に費やされるものなの?
サーバーがクラッシュして君の素晴らしいブログのデータが全て消え去ったときに失った時間を考えると死にたくならないの?
表情の無い男は答える。
「あぁ、なるほどね。君の質問を例えるならば、たぶんこれはとてもとても昔にあったファミコンブームに似ているのかもしれないね。
あの頃の僕らは熱かった。ファミコンを持っていればどんな奴でもクラスで人気者になれた。みんなが僕の家に遊びに行ってもいいかって聞いてくるんだぜ。ディグダグ、バンゲリングベイ、スターソルジャー、高橋名人、毛利名人、ファミコンロッキー、ウルテク、裏ワザ。こうやって口にするだけでもなんだか興奮してこない?」
「このブログはさ、僕にとってのファミコンなんだ。これを続けている限りみんなが僕のもとへやってくる。ほんとはめったに人の来ない部屋なんだけど、PCの中じゃ見ず知らずの人たちが大勢やってきて僕の記事を読み、僕の存在を認めてくれるんだ。素敵だろう?」
男の顔に疲れた笑みが浮かんだ。
静寂の部屋に遠くからサイレンの音がやってきた。
男は先ほどから喋っている相手が自分の内なる声だということに未だ気がついていない。
「そう、例えるならこのブログという存在は僕にとっての履歴書みたいなもんさ。この記録がある種マイノリティな人達に向けて発信され僕の存在が認識される。意味なんてなくたっていいんだ。それを認めてくれる人たちがここに集い、そして僕の癒しになるんだから。わかるかな?わっかんねーだろうなぁ。あ、これも昔々に流行ったフレーズなんだ。いやぁ何だか懐かしいや」
「うふふ。今日は八千ヒットか。」
男はひとしきり何事かを自分に語り終えた後で静かに眠った。暗闇の中に朝の光が染み入ってくる。男から見て左の方向から闇が割れ、そしてその波は徐々に暗い部屋を明るく侵食してゆく。部屋の全貌が明らかになってゆき、男の内なる闇も姿を消した。我々はもう少しこの部屋に留まり、闇の訪れとともに暫く男を観察してみるつもりだ。
「ある晴れた日に」 という言葉で思い浮かべる情景はどんなもの?
たぶん人によって違うと思う。ある人は大切な人と手を取り合って河原を歩く姿だったり、ある人は目に鮮やかな新緑の森を歩いているのを思い浮かべるのかもしれない。
私の場合はこうだ。
ある晴れた日に車を走らせ遅い朝食と早い昼食を食べにいく。助手席には黒い髪の凶暴な相棒を乗せて。
チェスティーノというお店に行ってきた。広い駐車場に車を停めて頭をぼりぼりとかきながら面倒臭そうに入り口に向かって歩く。柔らかな秋の陽光が目に眩しくて足取りも少し速くなる。

開け放たれた深緑の扉をくぐり、イタリアンファミレスといった雰囲気の店内で店員に席まで案内される。

セットメニューというものがあり、1350円を払えば好きなパスタが選べて、サラダとパンとケーキが付いてきて、なおかつファミレス形式のフリードリンクもついて新鮮なグレープフルーツジュースも飲み放題らしい。素晴らしい。
テーブルに置かれたたくさんのメニュー表を手に取ると中に「あんかけスパ」の文字が入った一枚のメニュー表が挟み込まれていた。種類もなかなかに豊富で追加料金を払えばアツアツの鉄板で提供することもできるらしい。
バイキング というメニューを選ぶ。私が好きな横文字の一つで勇猛果敢な海の荒くれ者というイメージを持つ。メニューにあるワケじゃないんだけどその他横文字では テキサス も好きだし ロックンロール もお気に入りだ。ポセイドン なんてのもいい。別にたいした理由があるわけじゃあなくて、ただなんとなくのイメージを持てる横文字で語呂とか響きが素敵に聞こえるという理由だけ。そういえばこの間、栄のヴィトン辺りをぶらぶらしていたら「さかな」というひらがながプリントされたTシャツを満足そうに着こなした白人男性を見かけた。彼にとってもたいした意味はないがなんとなくお気に入りのロゴだったのだろう。私にとっての「バイキング」も似たようなものだ。

こちらのバイキングはスパの上にソーセージとチキンカツが乗っていた。「どの辺がバイキングなの?」なんて野暮なことは聞いちゃいけない。全ては´なんとなくで`収まっていたほうが上手くいくし皆が幸せになれる。
しかし、あまり「あんかけスパ」に期待して頼んだわけじゃないが驚いた。何に? このクォリティに。
餡の酸味やスパイシーな辛味はほどほど。それでもしっかりと餡かけの要領を満たしている。なによりも印象的だったのが、舌に絡みつくドミグラスソースのようなコクだ。これは反則だろうってなくらい濃厚な味わいで、少しばかり基本的な路線を外れていたようにも思えたが、素直に美味しかった。あまり「あんかけスパ」に好意的でない人や、私みたいに偏愛を持った人でも楽しめる味だと思う。
好きな横文字で表してみれば ヨコイライクデミグラソース と面倒くさい表現となる。
少しばかり細い麺と、それをコーティングするべき油の存在が希薄であることを考慮に入れてもこれは紛れも無く「あんかけスパ」であり「あんかけスパには無いものを持ったスパ」だった。簡単に言えば、「なんとなくあんかけスパ」でもある。
言葉なんて重要じゃない。バイキング だろうと さかな だろうと本人にしかわからないシンパシーがあればそれでいいのだ。
なんとなくあんかけスパでありなんとなくバイキングであるこの食事は、ある晴れた日にぴったりの抽象的な存在であればそれでいいのだ。
ケーキも食べ終え、食後のコーヒーをゆっくりと楽しむ。
そしてお会計は二人で2700円だ。財布の中には千円札が二枚ばかりしか入っていない。コチラだけはなんとなくで済ますこともできずに、黒髪の凶暴な相棒に助けを請う。お金ばかりは抽象的な存在ではなく絶対的な事象であることを再確認できた。
ある晴れた日に、私はいびられながら車のハンドルを握る。
たぶん人によって違うと思う。ある人は大切な人と手を取り合って河原を歩く姿だったり、ある人は目に鮮やかな新緑の森を歩いているのを思い浮かべるのかもしれない。
私の場合はこうだ。
ある晴れた日に車を走らせ遅い朝食と早い昼食を食べにいく。助手席には黒い髪の凶暴な相棒を乗せて。
チェスティーノというお店に行ってきた。広い駐車場に車を停めて頭をぼりぼりとかきながら面倒臭そうに入り口に向かって歩く。柔らかな秋の陽光が目に眩しくて足取りも少し速くなる。

開け放たれた深緑の扉をくぐり、イタリアンファミレスといった雰囲気の店内で店員に席まで案内される。

セットメニューというものがあり、1350円を払えば好きなパスタが選べて、サラダとパンとケーキが付いてきて、なおかつファミレス形式のフリードリンクもついて新鮮なグレープフルーツジュースも飲み放題らしい。素晴らしい。
テーブルに置かれたたくさんのメニュー表を手に取ると中に「あんかけスパ」の文字が入った一枚のメニュー表が挟み込まれていた。種類もなかなかに豊富で追加料金を払えばアツアツの鉄板で提供することもできるらしい。
バイキング というメニューを選ぶ。私が好きな横文字の一つで勇猛果敢な海の荒くれ者というイメージを持つ。メニューにあるワケじゃないんだけどその他横文字では テキサス も好きだし ロックンロール もお気に入りだ。ポセイドン なんてのもいい。別にたいした理由があるわけじゃあなくて、ただなんとなくのイメージを持てる横文字で語呂とか響きが素敵に聞こえるという理由だけ。そういえばこの間、栄のヴィトン辺りをぶらぶらしていたら「さかな」というひらがながプリントされたTシャツを満足そうに着こなした白人男性を見かけた。彼にとってもたいした意味はないがなんとなくお気に入りのロゴだったのだろう。私にとっての「バイキング」も似たようなものだ。

こちらのバイキングはスパの上にソーセージとチキンカツが乗っていた。「どの辺がバイキングなの?」なんて野暮なことは聞いちゃいけない。全ては´なんとなくで`収まっていたほうが上手くいくし皆が幸せになれる。
しかし、あまり「あんかけスパ」に期待して頼んだわけじゃないが驚いた。何に? このクォリティに。
餡の酸味やスパイシーな辛味はほどほど。それでもしっかりと餡かけの要領を満たしている。なによりも印象的だったのが、舌に絡みつくドミグラスソースのようなコクだ。これは反則だろうってなくらい濃厚な味わいで、少しばかり基本的な路線を外れていたようにも思えたが、素直に美味しかった。あまり「あんかけスパ」に好意的でない人や、私みたいに偏愛を持った人でも楽しめる味だと思う。
好きな横文字で表してみれば ヨコイライクデミグラソース と面倒くさい表現となる。
少しばかり細い麺と、それをコーティングするべき油の存在が希薄であることを考慮に入れてもこれは紛れも無く「あんかけスパ」であり「あんかけスパには無いものを持ったスパ」だった。簡単に言えば、「なんとなくあんかけスパ」でもある。
言葉なんて重要じゃない。バイキング だろうと さかな だろうと本人にしかわからないシンパシーがあればそれでいいのだ。
なんとなくあんかけスパでありなんとなくバイキングであるこの食事は、ある晴れた日にぴったりの抽象的な存在であればそれでいいのだ。
ケーキも食べ終え、食後のコーヒーをゆっくりと楽しむ。
そしてお会計は二人で2700円だ。財布の中には千円札が二枚ばかりしか入っていない。コチラだけはなんとなくで済ますこともできずに、黒髪の凶暴な相棒に助けを請う。お金ばかりは抽象的な存在ではなく絶対的な事象であることを再確認できた。
ある晴れた日に、私はいびられながら車のハンドルを握る。
いまビートルズのGetBackを聞きながらこれを書いている。
1960年代の終わり、ちょうどビートルズがバンドとしての終焉を迎えようとしていたときにアップルレコード本社屋上でゲリラ的に演奏された曲だ。『(あの頃の自分達を)取り戻せ、取り戻せ』と叫んだ四人は結局何も取り戻すことなく反目のうちに解散してしまった。
彼らは音楽によって確かに何かを変えようとしていた(変えていった)が、自分達を変えることはできなかったようだ。
今回、訪問したのは「からめ亭」という一社にあるあんかけスパのお店だ。このお店について知っていることを少しばかり。
■以前は「ソール本山」という名で千種の本山にて営業していた
■更にそれ以前は「そーれ本山店」として営業していた
■現在はFC展開しており、あんかけソースの販売も行っている
以上、教えていただいたことも含め書き出してみた。

小奇麗な店内でカウンターとテーブル席が置かれている。ソースを持ち帰りで買う客が何人かいた。
このお店の麺量は以下の通り。
通常が200グラム
¥105増しで300
¥260増し450
価格の倍の¥100引きで600グラム
ということで私が注文したのは「ミックスの450g ¥1280」 腹が減って仕方が無かったのだ。

コロッケ トンカツ ササミフライ が乗り、ボリュームもたっぷりだが、450gの割りに麺量がヤバイってことも無くペロリとたいらげた。さすがにお腹はいっぱいになったけど少しばかり値段が張るかなーという印象もあった。
しかし、このソースはとても特徴的だ。ダークというか暗黒というか、ブラウン色の餡に慣れている者にとっては驚きの黒さだろう。味のほうは酸味、コクもしっかりあるんだろうけどスパイシーな刺激が強すぎてソースの暗黒面が全てを覆い隠してしまっている。これは中毒性があるようで、年配の人でもガッツリ食べてソースまでお持ち帰りしていたのも頷ける。突き抜けてしまった爽快感というものに強く惹かれた。
強烈な刺激のダークサイドに堕ちる私、クセになりそうだ。お子様向けではないが、アダルトな魅力溢れるあんかけスパだった。
好みがわかれるところだとは思うけど、やはり色々あったほうが面白いよね。
東新町の「ソーレ」との関係も気になるところだが、ソーレの餡が突き抜けるとこうなるって雰囲気もしっかりと感じられた。
あんかけスパの店も色々あるが、その潮流をたどると元はいっしょのお店で修行していた、なんてことが多いと聞く。あまり知らない店で食べた時に、あそこの味に似ていると老舗の店を思い浮かべる人も少なくないだろう。
ビートルズはその解散と同時に個々のソロで新しいサウンドを発信し続け、それもまた多くの人に影響を与え続けている。このお店は例えるならばジョージだろうか。ビートルズ内では決して目立った評価は与えられなかったが、その後はインド音楽への傾倒で新たな道の模索に成功した男。そして解散後にもっとも評価された男。
このお店にもそんな匂いがある。あまり上手くまとまっていないけど言わんとしていることは、一つのグループから飛び出した者が新たな味を作って発信し、更にそれをまた違うアプローチで提供していく者が増えてゆけば、もっともっと「あんかけスパ」も面白くなる。
「からめ亭」はそんな面白さを感じさせるお店でした。
やっぱり上手くまとめられないや
1960年代の終わり、ちょうどビートルズがバンドとしての終焉を迎えようとしていたときにアップルレコード本社屋上でゲリラ的に演奏された曲だ。『(あの頃の自分達を)取り戻せ、取り戻せ』と叫んだ四人は結局何も取り戻すことなく反目のうちに解散してしまった。
彼らは音楽によって確かに何かを変えようとしていた(変えていった)が、自分達を変えることはできなかったようだ。
今回、訪問したのは「からめ亭」という一社にあるあんかけスパのお店だ。このお店について知っていることを少しばかり。
■以前は「ソール本山」という名で千種の本山にて営業していた
■更にそれ以前は「そーれ本山店」として営業していた
■現在はFC展開しており、あんかけソースの販売も行っている
以上、教えていただいたことも含め書き出してみた。

小奇麗な店内でカウンターとテーブル席が置かれている。ソースを持ち帰りで買う客が何人かいた。
このお店の麺量は以下の通り。
通常が200グラム
¥105増しで300
¥260増し450
価格の倍の¥100引きで600グラム
ということで私が注文したのは「ミックスの450g ¥1280」 腹が減って仕方が無かったのだ。

コロッケ トンカツ ササミフライ が乗り、ボリュームもたっぷりだが、450gの割りに麺量がヤバイってことも無くペロリとたいらげた。さすがにお腹はいっぱいになったけど少しばかり値段が張るかなーという印象もあった。
しかし、このソースはとても特徴的だ。ダークというか暗黒というか、ブラウン色の餡に慣れている者にとっては驚きの黒さだろう。味のほうは酸味、コクもしっかりあるんだろうけどスパイシーな刺激が強すぎてソースの暗黒面が全てを覆い隠してしまっている。これは中毒性があるようで、年配の人でもガッツリ食べてソースまでお持ち帰りしていたのも頷ける。突き抜けてしまった爽快感というものに強く惹かれた。
強烈な刺激のダークサイドに堕ちる私、クセになりそうだ。お子様向けではないが、アダルトな魅力溢れるあんかけスパだった。
好みがわかれるところだとは思うけど、やはり色々あったほうが面白いよね。
東新町の「ソーレ」との関係も気になるところだが、ソーレの餡が突き抜けるとこうなるって雰囲気もしっかりと感じられた。
あんかけスパの店も色々あるが、その潮流をたどると元はいっしょのお店で修行していた、なんてことが多いと聞く。あまり知らない店で食べた時に、あそこの味に似ていると老舗の店を思い浮かべる人も少なくないだろう。
ビートルズはその解散と同時に個々のソロで新しいサウンドを発信し続け、それもまた多くの人に影響を与え続けている。このお店は例えるならばジョージだろうか。ビートルズ内では決して目立った評価は与えられなかったが、その後はインド音楽への傾倒で新たな道の模索に成功した男。そして解散後にもっとも評価された男。
このお店にもそんな匂いがある。あまり上手くまとまっていないけど言わんとしていることは、一つのグループから飛び出した者が新たな味を作って発信し、更にそれをまた違うアプローチで提供していく者が増えてゆけば、もっともっと「あんかけスパ」も面白くなる。
「からめ亭」はそんな面白さを感じさせるお店でした。
やっぱり上手くまとめられないや
あんかけスパ
ヨコイとチャオ 名古屋あんかけスパ界における二大メジャー
どちらもレトルトソースを販売しており 他店舗展開もしている
あんかけスパをソウルフードとしている人達の間では ヨコイ派チャオ派に住み分けされているとも聞く 例えばこうだ
「課長、今日の昼はあんかけスパ行きましょうよ。そこのチャオなんてどうですか」
「いやぁ、申し訳ないが僕はねヨコイ派なんだよ。君とは少し相性が悪いのかな」
「いやいやいや課長!ボクも実は昔っからそうでして・・・」
なんてこともあるのかも これも名古屋文化として根付いているという一例だろう 大げさに言えば ヨコイとチャオが一人の人間のパーソナリティーを象徴してしまう というお話し
つまり重要なのだ
まぁどっちが好みかということだけなんだけど 話しは大きくなればなるほど楽しいもの
チャオ@今池ユニー店

木目調の小奇麗な店内 テーブル席が多く一見してファミリー向けでもある
メニューにはあんかけ以外の「パスタ」や「ピザ」も並び立ち ドリンクバーもあるので ファミレスのような用途でもナイスだろう
マニュアル的な雰囲気の強いお店 そのような空気に安心を覚える人たちもいればそうでない人たちもいる 空気の画一化 それを忠実に実行する店員さんに注文を告げる
「¥800ミラカンのジャンボ ¥130からあげトッピング」

決して小さくはないフォークの傍に横たわる太い麺 熱されたラードをまとった麺は口に運ぶのを少し躊躇するほど熱い その逡巡の先にあるソースの味わい
スパイシーというには憚られるくらいマイルド 辛くない 酸味もそれほど
迫力にかけるという言葉が浮かび その次にはこのソースの前身が「トマト」であるというイメージがありありと湧いてくる
横文字で表してみよう フルーティーマイルド おぉすんなりと納まった
野菜とウインナーとチキンと麺と餡と 呉越同舟というほどでもないが 渾然一体にまったりと そしてボリュームはたっぷりと
しかし これ以外に少しばかり思うことも

見ての通りで食べ終えたのだが 多少残してしまう
その原因というのが 皿の底に多量にたまった油だ 油切りの問題だろうか 油にたゆたう麺に手を焼き 終了寸前での敗北
油と餡との馴染みがあまり良くないような印象もあった そして更に油の質の問題も 喉にひっかかりを覚えるのには何らかの理由があるはずだ 偉そうに物申した後で恐縮なんだけど これは単に個人的な好みの問題ということかもしれない
とまぁ もちろん美味しくいただけた(ロスタイム間際までだが)
最後にこんなことを書くのも重ねて申し訳ないのだが わたくしはヨコイ派であったりします
つまりこれはヨコイ派がチャオで食べた感想
つまりこれはもちろん 一部の人たちにして 重要ではなく信用にも値しないレポート という認識でいてもらえたら幸いです
つまりこれはもちろんされど この文体も某人のパクリ インスパイヤという便利な言葉も最近はあるようで そういう認識でいかがでしょうか
ヨコイとチャオ 名古屋あんかけスパ界における二大メジャー
どちらもレトルトソースを販売しており 他店舗展開もしている
あんかけスパをソウルフードとしている人達の間では ヨコイ派チャオ派に住み分けされているとも聞く 例えばこうだ
「課長、今日の昼はあんかけスパ行きましょうよ。そこのチャオなんてどうですか」
「いやぁ、申し訳ないが僕はねヨコイ派なんだよ。君とは少し相性が悪いのかな」
「いやいやいや課長!ボクも実は昔っからそうでして・・・」
なんてこともあるのかも これも名古屋文化として根付いているという一例だろう 大げさに言えば ヨコイとチャオが一人の人間のパーソナリティーを象徴してしまう というお話し
つまり重要なのだ
まぁどっちが好みかということだけなんだけど 話しは大きくなればなるほど楽しいもの
チャオ@今池ユニー店

木目調の小奇麗な店内 テーブル席が多く一見してファミリー向けでもある
メニューにはあんかけ以外の「パスタ」や「ピザ」も並び立ち ドリンクバーもあるので ファミレスのような用途でもナイスだろう
マニュアル的な雰囲気の強いお店 そのような空気に安心を覚える人たちもいればそうでない人たちもいる 空気の画一化 それを忠実に実行する店員さんに注文を告げる
「¥800ミラカンのジャンボ ¥130からあげトッピング」

決して小さくはないフォークの傍に横たわる太い麺 熱されたラードをまとった麺は口に運ぶのを少し躊躇するほど熱い その逡巡の先にあるソースの味わい
スパイシーというには憚られるくらいマイルド 辛くない 酸味もそれほど
迫力にかけるという言葉が浮かび その次にはこのソースの前身が「トマト」であるというイメージがありありと湧いてくる
横文字で表してみよう フルーティーマイルド おぉすんなりと納まった
野菜とウインナーとチキンと麺と餡と 呉越同舟というほどでもないが 渾然一体にまったりと そしてボリュームはたっぷりと
しかし これ以外に少しばかり思うことも

見ての通りで食べ終えたのだが 多少残してしまう
その原因というのが 皿の底に多量にたまった油だ 油切りの問題だろうか 油にたゆたう麺に手を焼き 終了寸前での敗北
油と餡との馴染みがあまり良くないような印象もあった そして更に油の質の問題も 喉にひっかかりを覚えるのには何らかの理由があるはずだ 偉そうに物申した後で恐縮なんだけど これは単に個人的な好みの問題ということかもしれない
とまぁ もちろん美味しくいただけた(ロスタイム間際までだが)
最後にこんなことを書くのも重ねて申し訳ないのだが わたくしはヨコイ派であったりします
つまりこれはヨコイ派がチャオで食べた感想
つまりこれはもちろん 一部の人たちにして 重要ではなく信用にも値しないレポート という認識でいてもらえたら幸いです
つまりこれはもちろんされど この文体も某人のパクリ インスパイヤという便利な言葉も最近はあるようで そういう認識でいかがでしょうか
えーっと、我輩はヌコである。ん、まだ名前はない。
本日は我輩のテリトリーである半田市をぶらり一匹旅にゃのだ。
半出しぶらり、ではなく丸出しぶらりの我が陰茎が人目に少し恥ずかしいのではあるが、最近は主人の留守を見計らって家を抜け出しちょくちょく散歩しているので慣れた感もある。それでも、後ろからいきなり抱きかかえられて衆人環視の元であけっぴろげに晒されるのは本意ではないのだ。これは猫権の侵害であると3丁目の空き地でも何度か議題に上っている。
しかし、半田市というところは道路が狭い。狭い道路に車だけは多いもんだからヌコにとっては歩くのにもいちいち後ろを気にせねばならない。今日もお決まりの散歩コースをうろうろしていたら、ふと鼻孔をくすぐる芳しい魚の臭いが漂ってくるではないか。我輩は主人である奥様に連れられて美容院というところに何度か出入りしたことがあるのだが、何故かその臭いは美容院というところにそっくりな部屋から漂っていた。

覗いてみるとカウンターの隅に一組の男女が並んで腰掛けている。二人以外に客の姿はない。少し悩んだ末に思い切ってその店に入ってみた。
「いらっしゃいませ。」優しそうな微笑を湛えた女性が出迎えてくれた。我輩がヌコであることに多少の驚きもあったろうに、それでも慇懃な物腰で迎え入れてくれた。巷ではヌコ差別というものが流行っているらしいが、この店に偏見は無い様子だ。この世界からヌコ差別を無くそう、とジョン・レノンも歌っていたから、彼女はジョンの歌を聴いていたのかもしれない。
我輩もしっぽをピーンと立ててニャーとひと鳴き、礼のポーズを取る。
どうやら最初に券売機で食券を買うのがこの店のルールらしい。
はて、困った。我輩には少しばかり難しい問題だ。しょうがないのでまたもひと鳴きし、店員を呼ぶ。
あー、えー、その。実は魚の好い香りに誘われてここまでやってきたのだが、魚っぽい食べ物はあるかね。
女性は明らかに驚いていた。我輩が人間の言葉を喋ったことによるものだということはマタタビを見るより明らかだ。実は都会的なヌコの大半は人間の言葉が喋れる。そりゃそうだ。かれこれもう何百年も人間とともに暮らしているわけなんだから学習しないほうがおかしい。ただ、それを大っぴらにしてしまうと人間とヌコとの位置関係が微妙なものになってしまう。人間の大半はヌコがニャーと鳴いていれば満足なのだから、無用な混乱はヌコの望むところではない。ヌコ的エビデンスに照らしあわせれば、我輩の行為は糾弾されてしかるべきものであろう。
しかし、今日の我輩はどうしても我慢ができなかった。
首輪の裏に挟んであった千円札を女性に向ける。できればマンマも食べたいということを伝えて食券を買ってもらった。
ぴょんっとカウンターの椅子に飛び乗り出来上がりを待つ。
カウンターはとても滑らかで冷たく、家の床でよくやるようにズサーっと滑ってみたいと思ったが人間の世界にはマナーというものがあることを思い出しやめておいた。

お腹が空いてたまらないのでニャーニャーと鳴いてみた。するとマンマが出てきた。

どうやら期待していた猫マンマとは違うようだが、これはこれで美味しかった。ふっくらと炊き上がったご飯がいつも家で出されるものよりも格別に思えた。
そうしている内にまちにまったアレの登場である。

「まるみを帯びたスープの味わいというのは塩ダレさえをも包み込む丸鶏のメタファーなんだよ」
「あら、そうかしら。この場合は丸みをおびた塩ダレのメタファーに内包されるスープだとわたしは思うわ」
「そうともいえる。つまりコーヒー牛乳における、コーヒー味の牛乳なのか牛乳味のコーヒーなのかという命題と同じようなもんだ」
「刑而上学的思考」
「そう、刑而上学的思考」
隣りに座った若いカップルが我輩と同じものを食べながら何やら難しい顔で話し込んでいる。スープは猫舌の許容を大きく超えるほど熱かったが、鰹風味の利いた味はそんなことがどうでもよくなるほど美味しかった。
味の塩梅はちょうど良いよりも一歩二歩ばかり控えめに思えた。アッサリとしすぎているせいか、舌の上に残る確かな味わいを求めてひと舐めふた舐めと続けざまに飲んでしまう。これはこれで心地よかった。

肉球で上手く箸を挟み込み、我ながら惚れ惚れする器用さで麺をつかみ取った。硬めで伸びのある麺はチュルチュルと楽しげな感触を与えながら口元に吸い込まれてゆく。
何やら隣ではまだ話しこんでいる。
「じゃあ聞くけど、炙られたチャーシューは何を象徴しているというの」
「それはもちろん、香り付けのメソッドだよ。いいかい、この肉にはご飯と合うような味付けはされていない。肉本来の旨味を味わってほしいからだ。しかしそれでは寂しすぎると思わないかい。君がいてこそ僕の人生が香りたつ。ある種、僕らを象徴するメソッドとも言えるよね」
「あらやだ、どこでそんな上手な言葉を覚えたの」
女はまんざらでもなさそうな表情で言った。
「刑而上学的思考」
「そう、刑而上学的思考」
いつまにか器の中は空になっていた。マンマとの取り合わせはミスマッチな食べ物だったが、全体的に控えめなバランスが後引くような美味しいお昼御飯だった。
男女はまだ何かを話し合っていた。人間は考える葦とは良く言ったもので、一本の糸をわざわざ複雑に結んでそれを解くという作業がどうにも好きな人種らしい。ヌコにとっては理解しがたい。
ご機嫌のまま店を出て小道を四足で駆け抜ける。
途中の並木通りで立ち止まりしばしの休憩。

こんな秋晴れの空を家の中で過ごすにはもったいない。
我輩は空を見上げ、再び木立が囲む道を一目散に走りぬけた。
吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ
麺屋 轍(わだち)@半田市
「¥700期間限定 塩ラーメン」
「¥200週変わり?(高菜)オリジナルライス」
本日は我輩のテリトリーである半田市をぶらり一匹旅にゃのだ。
半出しぶらり、ではなく丸出しぶらりの我が陰茎が人目に少し恥ずかしいのではあるが、最近は主人の留守を見計らって家を抜け出しちょくちょく散歩しているので慣れた感もある。それでも、後ろからいきなり抱きかかえられて衆人環視の元であけっぴろげに晒されるのは本意ではないのだ。これは猫権の侵害であると3丁目の空き地でも何度か議題に上っている。
しかし、半田市というところは道路が狭い。狭い道路に車だけは多いもんだからヌコにとっては歩くのにもいちいち後ろを気にせねばならない。今日もお決まりの散歩コースをうろうろしていたら、ふと鼻孔をくすぐる芳しい魚の臭いが漂ってくるではないか。我輩は主人である奥様に連れられて美容院というところに何度か出入りしたことがあるのだが、何故かその臭いは美容院というところにそっくりな部屋から漂っていた。

覗いてみるとカウンターの隅に一組の男女が並んで腰掛けている。二人以外に客の姿はない。少し悩んだ末に思い切ってその店に入ってみた。
「いらっしゃいませ。」優しそうな微笑を湛えた女性が出迎えてくれた。我輩がヌコであることに多少の驚きもあったろうに、それでも慇懃な物腰で迎え入れてくれた。巷ではヌコ差別というものが流行っているらしいが、この店に偏見は無い様子だ。この世界からヌコ差別を無くそう、とジョン・レノンも歌っていたから、彼女はジョンの歌を聴いていたのかもしれない。
我輩もしっぽをピーンと立ててニャーとひと鳴き、礼のポーズを取る。
どうやら最初に券売機で食券を買うのがこの店のルールらしい。
はて、困った。我輩には少しばかり難しい問題だ。しょうがないのでまたもひと鳴きし、店員を呼ぶ。
あー、えー、その。実は魚の好い香りに誘われてここまでやってきたのだが、魚っぽい食べ物はあるかね。
女性は明らかに驚いていた。我輩が人間の言葉を喋ったことによるものだということはマタタビを見るより明らかだ。実は都会的なヌコの大半は人間の言葉が喋れる。そりゃそうだ。かれこれもう何百年も人間とともに暮らしているわけなんだから学習しないほうがおかしい。ただ、それを大っぴらにしてしまうと人間とヌコとの位置関係が微妙なものになってしまう。人間の大半はヌコがニャーと鳴いていれば満足なのだから、無用な混乱はヌコの望むところではない。ヌコ的エビデンスに照らしあわせれば、我輩の行為は糾弾されてしかるべきものであろう。
しかし、今日の我輩はどうしても我慢ができなかった。
首輪の裏に挟んであった千円札を女性に向ける。できればマンマも食べたいということを伝えて食券を買ってもらった。
ぴょんっとカウンターの椅子に飛び乗り出来上がりを待つ。
カウンターはとても滑らかで冷たく、家の床でよくやるようにズサーっと滑ってみたいと思ったが人間の世界にはマナーというものがあることを思い出しやめておいた。

お腹が空いてたまらないのでニャーニャーと鳴いてみた。するとマンマが出てきた。

どうやら期待していた猫マンマとは違うようだが、これはこれで美味しかった。ふっくらと炊き上がったご飯がいつも家で出されるものよりも格別に思えた。
そうしている内にまちにまったアレの登場である。

「まるみを帯びたスープの味わいというのは塩ダレさえをも包み込む丸鶏のメタファーなんだよ」
「あら、そうかしら。この場合は丸みをおびた塩ダレのメタファーに内包されるスープだとわたしは思うわ」
「そうともいえる。つまりコーヒー牛乳における、コーヒー味の牛乳なのか牛乳味のコーヒーなのかという命題と同じようなもんだ」
「刑而上学的思考」
「そう、刑而上学的思考」
隣りに座った若いカップルが我輩と同じものを食べながら何やら難しい顔で話し込んでいる。スープは猫舌の許容を大きく超えるほど熱かったが、鰹風味の利いた味はそんなことがどうでもよくなるほど美味しかった。
味の塩梅はちょうど良いよりも一歩二歩ばかり控えめに思えた。アッサリとしすぎているせいか、舌の上に残る確かな味わいを求めてひと舐めふた舐めと続けざまに飲んでしまう。これはこれで心地よかった。

肉球で上手く箸を挟み込み、我ながら惚れ惚れする器用さで麺をつかみ取った。硬めで伸びのある麺はチュルチュルと楽しげな感触を与えながら口元に吸い込まれてゆく。
何やら隣ではまだ話しこんでいる。
「じゃあ聞くけど、炙られたチャーシューは何を象徴しているというの」
「それはもちろん、香り付けのメソッドだよ。いいかい、この肉にはご飯と合うような味付けはされていない。肉本来の旨味を味わってほしいからだ。しかしそれでは寂しすぎると思わないかい。君がいてこそ僕の人生が香りたつ。ある種、僕らを象徴するメソッドとも言えるよね」
「あらやだ、どこでそんな上手な言葉を覚えたの」
女はまんざらでもなさそうな表情で言った。
「刑而上学的思考」
「そう、刑而上学的思考」
いつまにか器の中は空になっていた。マンマとの取り合わせはミスマッチな食べ物だったが、全体的に控えめなバランスが後引くような美味しいお昼御飯だった。
男女はまだ何かを話し合っていた。人間は考える葦とは良く言ったもので、一本の糸をわざわざ複雑に結んでそれを解くという作業がどうにも好きな人種らしい。ヌコにとっては理解しがたい。
ご機嫌のまま店を出て小道を四足で駆け抜ける。
途中の並木通りで立ち止まりしばしの休憩。

こんな秋晴れの空を家の中で過ごすにはもったいない。
我輩は空を見上げ、再び木立が囲む道を一目散に走りぬけた。
吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ
麺屋 轍(わだち)@半田市
「¥700期間限定 塩ラーメン」
「¥200週変わり?(高菜)オリジナルライス」



